バンジャマン・フォンダーヌ「ラップ人たちの生活の情景」Scènes de la vie des lapons
最近は、もっぱら精神分析関連の本とバンジャマン・フォンダーヌの詩を読んでいる。以下に拙訳を載せている「ラップ人たちの生活の情景」もその一つだ。この詩は「フランス語練習」と同時代の作品であり、つまり彼がフランス語で詩を書きはじめた頃のものだ。
ラップ人とは、サミ人とも呼ばれ、ラップランド(ノルウェー北部から白海までの沿岸地帯。フィンランド、スウェーデン、ロシア北部を含む地方。)の少数民族のこと。この地では、詩の書き出しにあるように、トナカイ飼育が盛んなようだ。なお母系が重要視されているらしい。なぜ、ラップ人なのか、それはまだわからないのだが、詩人は「北」の方角に歌っているように思われる。
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このトナカイたちはやせすぎていて生きられなかった
日々を外へと投げ捨てよう 北極への旅
雪が、紙の花が、雪の紙のハンカチが
ああ なんて素晴らしい 地面の確かなのだ。
理性が氷山に立ち向かうことのできる国で
身体を互いに擦り付けあうその肌から 夜を連れ出すこの火
僕はそれは愛ではないと思うんだ ああペネロペよ
この不毛地帯には指と同じ数だけ深淵がある
君はそいつを追い出すのかい? モールス信号の季節だー
馬乗りの大海がその場所を強化するー
綱の上で 僕らの力を五倍にしよう
裸の筋肉のようなナイフの眩暈
これぞ皮と象牙と脂肪をソテーすることだ
ぶ厚い氷の下 死が歯を見せる
餓えた者とその子供たちは全く生のラードを食べている
歌のサモワール 煮え立った蓄音機
夢 変えよう 警告リボンはいかが
僕らはあえて踊ったのだろう 壁の上にはいなかった守護
天使は ブラシのような髪で白いシャツを着た
小さなヨーロッパが僕の膝に君の皺をよせる
僕らは自殺のアルプスをよじ登らねばならないだろう
ここは狂人の眠りの空間でしかない
君の力こぶは空の拳に反抗するものだったのか?
まさしくカオスが動き出す最初の日
水と大地がまたも血にまぜられ
男も女も溶け泣き叫んでいる
神の笑いが僕らの贓物を侵食する
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